猛将列伝

 

祇園花月の2月10日の夜公演「猛将列伝」を観に行きました。

 

「猛将列伝」は過去にも何度か不定期に大阪で開催されている、ミサイルマン岩部さん扮する「武将様」が様々なゲストを集め、武将様が考案したいろんなゲームや企画を行うライブだ、と聞いていました。

あと、事前に聞いていたのは「オリジナルの歌の時間がある」とか「手作りの小道具や舞台上の仕掛けへの作り込みがすごい」とか「全体的に、明らかにサービス過剰」とか「とにかく観たらわかるし、絶対面白い」とか。聞けば聞くほどよくわからないライブですが、とにかく初めて自分で観られる今日を、本当に楽しみにしていました。

平日の祇園で満員です。しかも、今日は同時刻に「R-1ぐらんぷり」の生放送もあるのに。始まる前からボルテージは高いです。

 

19時過ぎ。ゆっくり照明が落ち、開演前に鳴っていたBGMも静かに消え、次に舞台に照明が灯されると、そこには武将様が。

まず最初に武将様から今日の満員御礼を申し上げる口上があり、続いて、武将様とバックダンサーの女性4名による、テクノポップのような歌と踊り。

再びの暗転の後、今日のゲストである8名(野性爆弾川島さん・笑い飯・千鳥・ダイアン西澤さん・かまいたち)と、武将様の、合計9名の呼び込み。

「奈良!!死者を蘇らせる奇跡の左手!!!笑い飯西田幸治!!!!」

↑こんな感じで各芸人ごとに用意されたキャッチフレーズのナレーションが流れ(声はもちろん武将様)、舞台上のスクリーンには呼び込み用の映像が流れ、ひとりづつ(武将様のプロデュースによる、それぞれに特徴のある、戦国風の装いをした)ゲストの芸人さんが舞台に上がっていきます。

ここまで、舞台上に全員が揃ってオープニングらしいトークが始まるまでで、たっぷり15分は使っています。でも、全然冗長に感じない、ずっとテンションが上がり続けるだけの楽しい時間。

 

やっと全員が揃うと、軽いオープニングトークがあり、続いて武将様の仕切りによる大喜利のコーナーがあり、コント仕立てのゲームコーナーがあり、最後に歌のコーナーがありました。

別に急にめんどくさくなって説明が駆け足になったのではないんですが、それぞれのコーナーの詳細な紹介は今回は割愛させていただきます。単純にキリがないのと、出来れば次回以降の「猛将列伝」を劇場で観て、その狂いっぷりを確かめていただきたいので。

ただひとつ確かなのは、どのコーナーもいわゆる普通のお笑いライブの大喜利のコーナーやゲームコーナーのような感じではなく、一貫して「武将様の世界」であり、例えば大喜利のコーナーでは面白い回答をした人には武将様が直々にお餅をあげる、というルールになっているのに、「南国小熊の大名行列!」というSEが流れた時はコアラのマーチが、「お餅いつまでも~!」の時はガム、「♪甘味固形の接吻(♪バレンタインデイ・キッスのメロディで)」の時は「ばあやのチョコレート(辛いらしい)」が与えられ、笑い飯西田さんがその特異な左手を掲げると10個のお餅が宙を舞い、笑い飯哲夫さんの背中には矢が突き刺さり、さらに途中からは舞台上をネズミが駆けまわり、千鳥ノブさんにしか見えないキツネが現れて勝手に答えを書いていく、、、などなど、挙げだすと本当にキリがない、とにかく武将様考案のありとあらゆるカオスな茶番が2時間延々と続くようになっていて、演者さんも観客もひたすら振り回されっぱなしの、心を掴まれっぱなしでした。

そして何よりも他のお笑いライブと一線を画すると思われるのが「武将様」というキャラの特異性で、武将様は最初に出てきた時から「武将様」であり、自分のことを「ミサイルマン岩部のキャラのひとつ」だとかは絶対に舞台上で言わないし、このイベントに対する説明らしい説明もしません。始まった瞬間から、武将様は武将様であり、このイベントは当然のごとく「猛将列伝」であり、ここは「戦国時代」である、それを当然のように話し、振る舞います。

今のお笑いだと、芸人さんがキャラを作って振る舞う時、そこには「こういうキャラでやっているけど、実際の(普段の)自分は~」というギャップを使ったり、特に武将様のような「ぶっ飛んでる」キャラを演じる時は、舞台上でヘンな事を言ってスベったりヘンな空気になった時、自分から笑ったりテレたりして空気を崩して笑いに繋げたり、あるいは最初からその狙いで敢えて「ヘンな事を言って、スベって、それを自分で崩して笑いにする」っていう計算でキャラを作ったりするコトもありがちですが、武将様はずっと本気だし、どんなにヘンな空気になっても一切テレたり、心が折れる瞬間を見せたりしない。ずっと目がまっすぐ輝いていて、声色が一切震えない。

そこに対しては、自分がどんなにヘンな感じに持って行っても、自分から崩さずともゲストの強力すぎるメンバーが「何言うとんねん!」とか「それの何が面白いねん!」とかツッコんでくれることでフォローしてくれる、という確信と信頼があるというのもあるだろうけど、何にせよ自分で作った設定に対して、自分から崩したり茶化したりして絶対にウラ笑いにしない、その世界観があまりにも完璧すぎて、観ていても武将様のその頼もしさ、ハートの強さにどんどんヤラれてしまいます。

とにかく、ずっと続くいろんな茶番であったり、次から次へと出てくる小道具であったり、めちゃくちゃヘンなオリジナルゲームのルールであったり、最後の謎のオリジナルソングであったり、ありとあらゆる手を尽くして観る者とゲストで出演する人達を飽きさせない、武将様のアイデアの豊富さと、イベントプロデュース力というか、「絶対に満足させる」という意気込みのような力が凄くて、ちょっと普段のお笑いライブで感じるそれとは段違いの「濃さ」にやられてしまう、今までに何度も開催されていて演者もリピーターで来ている人もすごく楽しみにしている理由が1回観たら絶対に理解できる、すごく楽しくて魅力のあるライブでした。

 

次回もまたいつか、祇園なのか大阪なのかは判りませんが、きっと開催されるだろうと思われます。その時はぜひ参戦手形(=チケット)を手に、いざ劇場へ!