足跡の中を旅してる #008 / かせきさいだぁ≡ "さいだぁぶるーす"


かせきさいだぁ≡ - さいだぁぶるーす

日本語ラップが好き、という方にも色んなこだわりや聴き方、色んな嗜好や遍歴の人が居ると思うんですが、自分はスチャダラパーやEASTEND×YURIをきっかけに、LBネーションやFG周辺を特に好んで聴いて、それ以外は聴かなかったわけではないけど、そこまで馴染めなかった、共感できなかったし、とっつけなかった、そんなタイプの聴き方をしていた中高生時代でした。

そんなわけで自分の中の「この頃の日本語ラップ」というと、正直キングギドラやペイジャーとかあっちの方向よりも、この辺ばっかり聴いてた。そんな感じ。

 

この曲は、かせきさいだぁ≡がメジャーで最初に出したアルバムの1曲目に入ってる曲。かせきさいだぁが面白かった、当時のリスナーに新鮮に受け入れられたのは、スチャダラパーやEASTENDとはまた違う意味での既存の日本語ラップやヒップホップとの距離の置き方、ラップ一つにしても押韻のテクニックよりも軽やかさや独特の文学性で聴かせる感じ、曲によってはラップすら無く歌うだけの曲があったり、トラックやコーラスにはヒックスヴィルやTOKYO  No.1 SOUL SET、ホフディランといった人選を起用して、音楽的には「黒さ」以外の色で勝負している感じ、そしてアルバムのあちこちで曲に、歌詞にサンプリングされる「はっぴぃえんど」の面影、そういった今までの人達とは一線を画すスタイルだったと思います。ホントに新鮮だったし面白かったし、何より聴いてて気持ちよかったし、心にスッと入ってくる感じ、そして今度はかせきさいだぁを入口にはっぴぃえんども聴きたくなる感じ。

 

ちなみにかせきさいだぁは2013年に(なかなか唐突に)アニソンカバーばかりを集めたアルバムを出し、色んな意味で世間や昔からのファンを驚かせるのですが(ていうか、もう殆どラップしてない!普通に歌ってるだけ!)、このアルバムの最後でマクロスFの「星間飛行」をカバーしています。


星間飛行 - かせきさいだぁ

普通のラッパーの人がある日いきなり「星間飛行」をノリノリで歌ってカバーしたなら、そこに何の意味があるのかはなかなか判らない話ですが、この人に限って言えば、ずっとはっぴぃえんど=松本隆への敬愛を表し続け、その松本隆が別の流れでアニソン業界と合流して生み出したヒット曲「星間飛行」をかせきさいだぁがカバーするのは、当然以外の何物でもないし、他にも途中に入る「キラッ☆」の声だとか、最後のフレーズだとか、コーラスが誰と誰とか、そもそも編曲がコーネリアスの「太陽は僕の敵」丸パクリじゃないか!とか、色んな意味で分かる人だけ首がもげるほど楽しめるし、ヘタしたら色んなコト思い出しすぎて、歴史がつながりすぎて泣いてしまう曲。そうでなくても普通に楽しめる曲なんですが!