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市川春子「宝石の国」/ごく個人的な視点での話

市川春子さんの「宝石の国」の4巻が発売されました。

とは言っても自分は(同作品が連載されてる)アフタヌーンも読んでないし、「宝石の国」自体も3巻が出た頃から読み始めて楽しんでいるニワカもニワカなんですけど、ものすごく面白い作品だと思います。ホントに毎回「次はどうなるんだー!」と思わされる。

 

この作品の魅力を言葉にするのは物凄く色んな角度があると思うんですけど、個人的に主人公のフォスフォフィライトが好きすぎるので、このキャラについて少し文章にしてみたいと思います。

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(↑常々思ってる方がフォスフォフィライトです。ちなみに、すっごく変わってみるのを提案してるのはダイヤモンド)

 

最低限のあらすじを説明すると、この作品は「人間がいなくなった地球に住み続けている、人間の形をした「宝石」と、その宝石を月から奪いに来る「月人」と呼ばれる生物(?)との戦いを描いた作品」みたいな感じになると思います(少なくとも、今の段階では)。

主人公のフォスフォフィライトは、最初は「ドジで臆病で脆くておっちょこちょいだけど真っ直ぐで」みたいな、まさにマンガの主人公の王道を行くキャラなんですけど、話が進むにつれフォス(作中ではこう呼ばれる)が経ていく成長の過程は、ちょっと他のマンガでは類を見ないくらい、ドラスティックで驚かされます。

ネタバレを避けたいので詳細には触れないものの、あくまで(人の形をしているけど人間ではない、怪我や死の概念がない)宝石だという事を逆手に取るように、フォスは話が進むにつれ、身体の一部を失い、違う素材で再生させては、人型の原型さえどんどん失って、性格までも変わっていきます。

それはいわゆるマンガ的な、『最初は臆病で弱かった主人公が戦いの中で色んなコトを学んで勇敢になり、力を手に入れる』的なのとは毛色の違う、最初のドジで臆病で脆くておっちょこちょいだけど真っ直ぐだったフォスフォフィライトは、話が進むにつれ最初の頃とは比べ物にならないくらい強く、俊敏で、冷静に行動するようにはなるものの、なんともいえない脆さは変わりなく感じさせられる、そんなキャラになってきている。いわゆる「成長する」「レベルアップする」という概念には括れないような、そういう言葉で表すにはあまりに斜め上が過ぎるというか。

そんなフォスを読み進めるうちに思うのは、最初の「ドジで臆病で脆くておっちょこちょいだけど真っ直ぐで」の部分に愛着や共感を感じていた自分が、気がつけば割とそうでなくなっていても(ついでに見た目も結構変わっちゃっても)、フォスというキャラに変わりなく愛着と興味を持っていることに気づかされます。

 

ヒトって、少なからず「変わりたい」と思いながらもなかなか変われない、自分というキャラを構成している(特に、自分が周囲に対して「これが自分」という目印のように使っているような部分の)要素を変えたり、捨ててしまうことって、それをすることで自分の周りに居てくれてる人達が離れていくのではないか、呆れられたり笑われたりするんじゃないかと思ったりして、なかなか出来ないと思うんです。

だけど、少なくとも自分はこの作品を読んでいる間で、フォスが(自分が最初に愛着を感じたような部分から)次々と変わっていくことに対して、それでそんなに愛着を失っていく感じがしない、共感できなくなっていくわけでもない、別にそこだけで見ていない(見ていなかった)自分が居ることに気付いてしまう。

そうなってくると思うのは、人が何かしらのヒトやキャラクターや、無生物でも、何かに対して興味や好意を覚える時、その対象物自体に愛着を感じているのか、それとも、その対象物が持っているステータスのようなものに目的を見つけて接触しているのか、二種類あるなあと思ったり。

前者であれば、その対象物の存在自体が大事だから、その対象がどんなに変わっていこうと存在してくれているだけで割とずっと肯定してついていられるし、後者であれば、その対象物が変化して、自分にとっての「目的」が失われた時点で、一気についていく気がなくなってしまう。

 

それで、人間も案外そんなもんじゃないかな、というか、自分が「これが自分」と思って使ってるつもりの要素をいくつか持っているとしても、それをある日急に捨ててみたり変えてみたところで、自分にとって本当に(という言い方も重さがありますが、まあ自分を「目的」ではなくて)見てくれている人にしたら、意外とそこはどうでもいい部分、そんなに自分が思うほど気にされている部分ではないのかもしれないな、というか。

そんな風に思うと、自分が「変わりたい」と思いながら変わろうとするのを躊躇する時に、このフォスフォフィライトの変わっていきっぷりは、少し背中を押されます。きっと。

 

あんまりうまく説明できませんが、それ以外にも、とにかくフシギで「どういう考えしたらこんな発想が出てくるんだ」と思わされるような設定やストーリーも、読んでいる最中の頭のなかで静と動がカチカチ切り替わりながら進んでいくような独特のテンポ感も、そして何より各キャラクターが持つ魅力や美しさも、色んな意味でハマらされるとっかかりの多い作品だと思います。一度読んでみていただければ!

 

宝石の国(4) (アフタヌーンKC)

宝石の国(4) (アフタヌーンKC)