レイザーラモンRGと、あるある芸の向こう側

 

祇園花月の2月11日の夜公演「RGが120分あるある歌い続け、それを浅越ゴエが120分実況解説する会」を観に行きました。

 

祇園花月のオープン当初から年に2~3回ペースで行われているイベントですが、近年は毎回チケットが公演前に完売し(京都という立地で500席のキャパシティを持つ祇園花月で、前売完売するイベントは本当に珍しい!)、イベント自体もレイザーラモンRGさんと浅越ゴエさんの2人だけで他に有名なゲストを入れるでもなく、ここでしか聞けないような暴露話などをするでもなく、やることは毎回同じで

1.RGさんが舞台上から客席に向けて、あるあるのお題を(挙手で)募る

2.そのお題を元にRGさんが(自分の選曲で)あるあるを歌い、それをゴエさんが(客席前列中央に作られた)実況席からマイクを通して実況(という名のツッコミ)を入れていく

3.歌が終わると、お題を採用されたお客さんにRGさんから色紙が贈呈される

このサイクルを120分ひたすら続けるだけ、という本当にシンプルな内容ながら毎回(誇張ではなく、本当に)異様な熱気と盛り上がりに包まれ、大満足の拍手の中で終わっていく、という、ちょっと本当に現場で見てもらわないとその理由が説明できないライブになっています(なんせ、とにかくメチャクチャ盛り上がるんです!ものすごい盛り上がる)。

 

そして、当然ながらその盛り上がりを支えるのはRGさんの「あるある」とゴエさんの「実況」という2本柱なわけですが、とりわけこの「あるある」がとにかく面白い。

レイザーラモンRGさんのあるある芸というと、テレビでもたまにネタ番組のアクセント的に使われることもあり、認知度はけして低くはないとは思うんですが、このイベントでは、その「テレビの時のあるある芸」とは比べられないくらいに進化した、「超実戦エンターテイメントとしてのあるある芸」が味わえる、と感じます。

そのように感じられる理由として、まず、「あるあるを歌う」というざっくりしたパッケージの中に様々な要素が潜んでおり、一般的な「(フリップや漫談で)あるあるネタを言う一言芸」や「歌ネタ」よりも遊びを届かせる部分が広く深く伸びているのが挙げられると思います。

・根本的なオチの部分のあるある

まず大事な要素として、歌の(主に)最後にオチとして使われる「あるある」の部分。これもRGさんのあるある芸がピックアップされ始めた頃は、そのあるあるの「粗さ」が面白がられることも少なくなかったものの、その時期を経て、レイザーラモンRGは数年間に渡り、場所を選ばずにネットで、舞台で、テレビやラジオで、ひたすらありとあらゆるお題で「あるある」を言い続け、いつしか本当にあるあるのプロフェッショナルになってきている感があります。

もちろん微妙だったり、期待を大きく外す時も少なからずあるものの、毎回かなりの精度で「それは確かにあるあるだ!w」とハッとするような、日常の万物に対する独自の切り口を感じるあるあるが出ることも多く、シンプルなネタとしての精度の高さも十分に感じられます。

・選曲に潜む、もうひとつのあるある

毎回あるあるを歌うためにRGさんは自分で何か曲を選ぶ(そしてカラオケに自分で入力する)わけですが、その選曲自体も、もう1つの「あるある」になっていると感じます。

RGさんがあるあるを歌うときの曲として代表的な、石井明美CHA-CHA-CHA」やTUBE「シーズン・イン・ザ・サン」や安全地帯「ワインレッドの心」といった80年代ヒットの定番を中心に、たまには90年代ヒットや洋楽の定番まで、とにかく縦横無尽に、(RGの舞台を見に来るような世代のお笑いファンにとって)「ちょうどいい懐かしさ」の「誰もが嫌いじゃないけど、誰もが心の第一位に挙げる程ベストでもない曲」の、本当にちょうどいいところを突いてくる選曲。

その選曲自体が、またひとつのボケというかツッコミどころであり、ひとつのあるあるになっていると感じられます。

・パフォーマンスや替え歌としての遊びと、ライブならではの空気感

RGさんのあるある芸といえば有名なのが「○○あるある早く言いたい~」と歌いながら最後まであるあるを言わず、周囲から「早く言え!」とツッコまれ続ける、という構図だと思われますが、今のライブでのあるある芸はもうそのレベルを終え、もっと次のレベルに行っている(!)ように感じられます。

例えばそれは歌いながら原曲の振り付けを再現してのダンスを見せたり、歌いながら歌詞を「○○あるある早く言いたい」に変える部分と、変えずに原曲の歌詞を残す部分とを使い分けながら歌う過程で、(偶発的に、あるいは計算の上で)絶妙にヘンで面白い歌詞が出来てしまったりする、あるいは、たまには熱唱や声マネに集中しすぎてあるあるをオチで言う前に曲が終奏に入ってしまってRGさんが呆然とする、そういった時に爆発的に笑いが出る、ライブならではの生を味わう空気と、(成功しても失敗しても)毎回それを完全に楽しめる空気が出来上がっている、その辺の魅力もすごく感じます。

・歌ネタとしての本来の魅力の部分

あとは結構シンプルなことなんですけど、「魅力的な声を持っていて、そこそこ歌がうまい人が、自分が好きな曲を楽しく歌っているのは、いつまでも聴いていられる」という、歌ネタや歌本来の魅力が十分に詰まっている、それも重要なポイントだと思います。

勿論この辺はRGさんの声や歌やネタが好きではない人にはまた違う話になってくるとは思うんですが、いかんせんこのライブは毎回それが好きな人が満席になるまで押しかけて、毎回ものすごく盛り上がっている、という、その現状が全てだと思います。

 

あとは、さらにそれにプラスして「毎回ヘンな所をついてくるRGのキャラ」や「浅越ゴエさんの実況の的確さとベストタイミングさ」や「色紙での名前ボケ」や「格闘技ファンでもあるRG・ゴエコンビならではの、開演時と終演時に行う観客の心を揺さぶるようなマイクパフォーマンス」や「毎回、劇場に来れなかった人に向けて、リアルタイムでお題だけつぶやいてあるあるは教えてくれない、謎の実況ツイートをしている祇園花月のスタッフのツイッターアカウント」などなど、他にもいろんな魅力のあるイベントなんですが、とにかくゴチャゴチャ言っておりますが結局は理屈抜きに楽しい!のと、とにかく異様な熱量の笑いと感動が味わえるライブです。

次回はまた夏か秋ごろに開催されると思われますが、未体験の人にもぜひ一度、この不思議空間は現場に来て実感して楽しまれていただいたいと思う次第です。是非!